Day31.「起」の話
昔から影をよく見ていた。
あの通学路、部活終わりにみんなで帰る道、僕だけが後ろを歩いている。
隣には誰もいなくて、みんなの影を踏みながら話を聞いて、そこにいるために笑っている。
成績優秀でスポーツもできるあいつにはどんな景色が見えていて、どんなことを考えているのだろう。
わかりもしないそんなことをずっと気にして、こびり付いた焦げのようにいくら擦ってもとれない。
笑われると、怒られると、自分がそこにいてはいけない気がして、だけど逃げ出す勇気もない。
幸せで充実した毎日はやってくるのか。
素直な自分と出会えるのか。
自分で自分のことを好きになれるのか。
踏み出せない僕はみんなの影に引き摺られている。
明日こそは
自分の好きな自分でいられるように
と思うけれど、また夜更かしをする。
夢を持っている人に
がんばることができる人に
欲望に打ち勝つことができる人に
責任を負うことができる人に
ずっと憧れて、
だけど引き摺られる方が楽で、
何事もなく過ぎ去っていく日々でいい。
僕は生きている意味はあるのか
そんな心の奥底の黒ずみは
ロックの音で流したつもりにする。